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- 佐久間 健の執筆活動 : 新聞寄稿(生産性新聞 2006年12月15日)
キヤノンはグローバルな優良企業として成長発展を遂げている。その大きな要因は、確固たる企業理念「共生」に基づく経営をしてきたからである。会長の御手洗冨士夫氏は「キヤノンのCSRは共生で、共生は経営の柱」と言っている。
キヤノンには高い理想主義とそれを実現する企業文化がある。歴代の社長は時代を読んだ「構想」を計画しそれを実現してきた。この構想の中核に位置付けられているのが共生である。賀来龍三郎の「グローバル優良企業構想」、御手洗冨士士夫社長(当時)による「グローバル優良企業グループ構想」が代表的なものだ。構想は危機脱出の時もあれば、飛躍を目指す時もある。いずれも社内の意識改革と体質改善を主軸に経営革新が展開され強い企業となり、画期的なヒット商品を世に出し、グローバル企業へと成長発展を遂げてきた。
キヤノンのCSRの特徴は、企業理念であり,CSRである共生が企業戦略として日常業務の中に組み込まれ、それが確実に遂行されていることである。これが社会の信頼を得、強い超優良企業になれた大きな要因である。第3代社長の賀来龍三郎は企業を社会の公器と考え「共生」という世界に通じるCSR理念を作り上げた。「共生」は人種や国家、宗教を超えて普遍性を持っているグローバル社会に適合した企業理念である。「共生」はキヤノンの全従業員のベクトルを同じ方向に持っていく目標を達成するための理念である。確固たる理念がある企業は強い企業になれることができる。企業理念に従い企業戦略を立てそれを遂行することが強い企業を創ることを賀来は知っていた。初代社長の御手洗毅の時はまだ共生の企業理念はないが、社員の生活の安定と幸せを企業の重要な目標と掲げた「人を尊重する経営理念」があり、御手洗毅はCSRの見本のような経営を行い将来のキヤノンの土台を作り上げた。
第4代社長の山路敬三は環境保全の重要性を強く認識し、環境をビジネスの中に取り入れ、環境と経済の共生を説きキヤノンの環境経営の基盤をつくり,経済界にてCSRの伝道者の役割も果たした。
これら各社長の共生の理念を集大成し強力な企業戦略を確立したのが第6代社長で現会長の御手洗冨士夫である。キヤノン的日本経営を大切にし、共生により、キヤノンを世界的企業へと飛躍発展させた。コミュニケーションを重要視した経営により、社是と行動指針を重要視し共生の活性化を行い、その質と内容を大いに高めた。企業と社員は運命共同体であると説く。
キヤノンのCSRの特徴をまとめると次のようなことが言える。
- 各経営者に共通しているのは、CSR共生に基づく「確固たる世界観」を持って経営を行っていること。
- 日本的経営の良さと質をCSRにより高めたのが、キヤノンの経営である。問題が起こった時は企業理念「共生」に従い正しい判断をすること。
- 各社長の「構想」は常に共生が基本となって構築され、CSRの質的内容をそれぞれの時代に合わせて高め、日常業務の中で遂行し、強い企業をつくってきた。
- キヤノンは常に世界中のステークホルダーのために存在理由のある経営を行うことを目標とする。これはCSRの基本理念でもある。
- 各経営者は企業文化を企業と社会背景にあわせて構築しそれを育て、CSRを遂行しやすい企業環境をつくってきた。
キヤノンは大企業も中小企業も大いに参考になるCSRの最大の手本といえる企業である。